2012年8月28日火曜日

『進撃の巨人』(8)、諫山 創

新刊購入。


このマンガを読め! 2011」で高く評価されたこのマンガも早8巻目。


半ば惰性で買っていたけど、ここに来て急展開。
面白くなってきました。


思えば、「これが'00年代の少年漫画だ!」という帯のアオリ文句もそれほど大げさではなかったか。


それにしても、ブログ記事を振り返ってみると、
なんかマンガばっかり読んでるなあ。


2012年8月26日日曜日

『資本主義が嫌いな人のための経済学』、ヒース、山形浩生訳

不勉強な左派と図に乗った右派の両方をくさし、経済学の価値を認めるべきところでは認めろと主張するえらい本。

2012年3月18日 朝日新聞朝刊

2008年金融危機に始まる世界不況、さらには震災後には特に、「資本主義はもう終わり」みたいな物言いを無数に見かけてきた。これは特に左派に多いし、その人たちは資本主義の理論的根拠(と思っている)経済学も破綻したと言いたがる。

でもそのほとんどは、実は経済学の主張をろくに知らず、自分の主張も考え抜いていない。そしてその無知と怠慢につけこんで、現状維持の保守派が乱暴な議論をしても反論できず、おかげで万年負け犬の地位に甘んじている。

それじゃダメだ。資本主義のダメな現状を改善したいなら、左派もちゃんと勉強しようぜ、というのが本書だ。

というわけで本書は、筋金入り左派哲学者による、むずかしい綱渡りだ。経済学を濫用して既成体制の走狗と化した一部論者には鉄槌を。しかし優しさとか友愛とか、無内容なお題目を垂れ流す左派の情緒的議論にも手加減無用。本書の邦題は実に秀逸だ。まさに資本主義が嫌いな人こそ、ちゃんと経済学を学ぼう。実は、嫌いな部分を考えるヒントは既存の経済学でかなり議論されているんだから。それが本書の中心的な主張だ。

書き方や主張は実にストレートだ。個人的には「ヤバイ経済学」批判など少し異論もあるが、主張はおおむね納得できる。経済学者が書いたら、上から目線で無知な大衆に説教するような嫌みな本になりがちだが、それもない。

ただし内容的にはちょっと高度で、十分な理解には経済学について多少の予備知識はいる。また前半/後半で投げ出さず、是非とも全体をバランスよく読んでほしい。特に左派の読者は、ミイラ取りがミイラになったと思うかもしれない。資本主義だの合理的個人だのをかなり擁護する本だから。でも表面的な好き嫌いだけでそれを否定するだけでは前に進めないのだ。本書をきっかけに、それに気がつく人が一人でも増えてくれれば……


書評備忘。
引用元は山形浩生「経済のトリセツ」から。

本職とも関係するので、ぜひ読みたい/読むべき本。





2012年8月19日日曜日

『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』、四方田犬彦評


朝日新聞 GLOBE 2011年 6/5-18
Cinema Critiques [映画クロスレビュー]

『愛の勝利を』

ムソリーニの愛人。存在をかけた愛と悲劇

――みどころ――
イタリアの独裁者となるムソリーニ(フィリッポ・ティーミ) に尽くした女性、イーダ・ダルセル(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)の物語。ムソリーニは妻子ある身だったが、イーダと落ちる。彼女は財産をなげうってムソリーニの政治闘争を支え、息子(ティーミの二役)も授かった。だが、国家統帥となったムソリーニは、イーダの存在を消そうと、書類を改ざんし、精神科病院の閉鎖病棟に送り込む。愛の真実を訴え、彼女はひとり立ち向カう。監督マルコ・ベロッキオが資料映像などを織り交ぜながら、ひとりの女性の史実を掘り起こす。全米批評家協会賞主演女優賞受賞。
(東京で公開中。全国で願次公開)

四方田犬彦 (評価)☆☆☆☆☆(最高)
これは懲罰と監禁をめぐる痛ましい物語である。ベロッキオ監督は1960年代末に詩人パゾリーニに激賞されて以来、一貫して狂気と抑圧という主題を取りあげてきた。そして、日本と同じくポスト・ファシズム体制を生きるイタリアで、同時代の不幸なテロリズムの顛末(てんまつ)を見据えてきた。その彼がムソリーニの傍らで生きた(そして殺害された)女性を描いた。精神病院なる機関がいかに人間の自由を蝕(むしば)み、全体主義国家において牢獄の代用物であったかは、旧ソ連で実証されている。この忌まわしい制度を近年全廃したイタリアでこそ、この作品は制作が可能であった。日本にこのような敢督はいるのだろうか。


1年以上前の新聞から。

敬愛する四方田犬彦氏の評が掲載されていたので切り抜いていた。
素直に面白そうな映画だと思う。
すでにDVD化されてるみたいなので、機会があれば観たい。

しかし、Amazonのレビュー、2人が正反対の評価をしていて興味深い。
それだけ人の感情を揺さぶる映画なのでしょう。




2012年8月18日土曜日

金融円滑化法 中小企業、活用しても経営難

朝日新聞、2012年8月9日朝刊

金融危機で資金ぐりが苦しくなった中小企業の借金返済を先延ばしする金融円滑化法が、来年3月末で期限切れになる。
一時的には助かっても、経営を立て直すことができず、倒産する企業が増えている。

* 金融円滑化法
2009年12月に施行。元本の返済を待ってほしいといった要請が中小企業などからあったとき、それに応じる努力義務を金融機関に課している。
当初は11年3月までの時限立法だったが、2回延長された。

岡山市で、住宅の地盤工事を行う中小企業が2010年春、金融円滑化法を利用して、借金の返済猶予を金融機関に求めた。
08年のリーマン・ショック後、住宅着工件数が半減し、資金ぐりが悪くなったためだ。
地方銀行や信用金庫からの借金は計6千万円。金融機関は返済猶予に応じてくれた。
金融機関は、仮に融資が焦げ付いても、信用保証協会が損を肩代わりしてくれる制度を活用。自分たちの負担はほとんど発生しないので気前がよかった。月々200万円だった返済額は一気に10万円に滅った。「売り上げが確保できれば、まだやれる」。社長(64)は再起に向け、営業を強化。営業所を独立採算制に変え、社員のやる気も引きだそうとした。

ところが、夢はあっけなく打ち砕かれた。

岡山県内はライバル企業が多く、たたき合いで工事単価は2割下がった。
一方、材料費は2倍近くに上がり、赤字受注が続いた。
負債は1億6千万円に膨らみ、再建を断念。昨秋、破産を申し立てた。

国民負担も増加

金融庁によると、返務猶予してもらった中小企業は全国で30万~40万。
信用調査会社の帝国データバンクは8日、円滑化法を活用した中小企業の7月の倒産が前年同月の2.4倍の41件に急増し、過去最多になったと発表。
返済猶予が、一時的な延命策にすぎなかったことが表面化してきているのだ。
倒産が増えれば、国民負担も増える。金融機関の焦げ付きを、全国の信用保証協会が肩代わりする費用として、すでに計4兆8千億円(08~11年度)の国費が使われた。
政府内には、12年度も1兆円前後の税金投入が避けられないとの声がでている。    
(松田史朗)

「地域経済は深刻な疲弊のもとにある。
こうしたなかでの大増税は、国民の暮らしに計り知れない打撃を与える」。
長野県坂城町議会は6月、野田佳彦首相らに消費増税撤回を求める意見曹を全会一致で決めた。
意見書を出すよう陳情した宮坂富雄さん(65)は隣の千曲市で電器店を営む。
昨夏に地上デジタル放送になってから薄型テレビのブームが終わり、売上高は一時、半分以下に落ちた。
商店街では「増税後も商売が続けられるだろうか」と不安を言い合うことが多い。
長野県商工団体連合会によると、6月末までに県内77市町村のうち30近い議会が増税反対の意見書を可決した。
全国では、神縄県名護市議会、岩手県議会などで可決が続いている。

宮坂さんは「増税されれば、輸出をする大企業だけが残り、地域の中小零細企業はつぶれかねない」と心配する。大企業が集まる東京や大阪など大都市に比べて地方は所得が低く、消費増税で消費が大きく落ち込むおそれがあるからだ。

内閣府の県民経済計算では、一人あたりの年間所得は2009年度、東京都が391万円で最も多く、高知県が半分ほどの202万円で最も少なかった。
11年の県庁所在地ごとの物価指数は横浜市の107.1が最も高く、宮崎市の96.7が最も低いなど地方は物価が安いが、大都市圏との所得格差ははるかに大きい。
所得が低い人は食料品など生活必需品にお金を使う割合が高い。一方、消費税は生活必需品にも同じようにかかるので、所得が低い人ほど負担感が強い「逆進性」がある。つまり、消費増税すれば、地方に住む人ほど負担が増し、くらしが厳しくなるのだ。
地方では今、円高が進んで企業が工場をアジアなど海外に移したり、園内生産を縮小したりしている。

日産自動車は小型車マーチの生産を10年に日本からタイに移した。
ソニーは、栃木、福島県の計3事業所でしていたリチウムイオン電池の組み立てを、来年度末までに中国とシンガポールの工場に移す予定だ。
大企業の工場は他の職場より給料がいい。これらがなくなれば、地方の所得水準はさらに下がり、働く場も減る。こうした地方の疲弊に消費増税が追い打ちをかける。
「増税の必要性は理解するが、(物価が下がり続ける)デフレ下では瀕死の地方経済に致命的な打撃を与えるととになる」。
参院の特別委員会が1日に字都宮市で開いた地方公聴会で、大市木材店(字都宮市)の大塚泰史代表取締役はこう訴えた。

(大日向寛文、松精祐子)


本職備忘。
地方経済の不振を伝えるため、
金融円滑法と消費税の増税が同じ囲み記事で取り上げられてる。


2012年8月17日金曜日

『天才柳沢教授の生活』(33)、山下和美


新刊購入。


昨日の『夏目友人帳』と同様、ずっと新刊を買い続けているマンガ。

最初立ち読みしたと時は、主人公の柳沢教授のキャラクターが
なんとなくステレオタイプな「大学教授」として描かれてるように
感じられたから敬遠してました。
が、その後友人から
「もっとちゃんと読め。これは読むに値するマンガだ」
との忠告を受けたので読み直したところ
(人から言われたことには素直なところが自分のいいところだと思う)、
そのすばらしさに開眼。
以後新刊を買い続けている。

『夏目友人帳』と同様、夫婦で楽しめるマンガ。



2012年8月16日木曜日

『夏目友人帳』(14)、緑川ゆき


新刊購入。


妻が買い続けているマンガ。
ずっと新刊を買い続けてるけど、
期待を裏切られたことは一度もない。
「このマンガ、面白いな~」と思ってたら、
いつのまにかアニメ化してた。
みんな面白いものには敏感なんだな。

このマンガ、白泉社、「花とゆめ」コミックスの装丁で、
思いっきり少女漫画のコーナーに置いてあるから、
妻が買ってこなければ手にしなかったと思う。
その意味で妻には感謝。



2012年8月15日水曜日

近畿の税収、2年ぶりに減る。

朝日新聞、2012年8月9日朝刊、msn産経WEST

大阪国税局は8日、平成23年度(2011年度)に
近畿6府県で納められた国税の総額が6兆9217億円だったと発表した。
前年度より196億円(0.3%)減少し、2年ぶりの減収。法人税は402億円減の1兆6256億円で、税目別では最大の減収額となった。

国税の総額が2年ぶりの減収となった要因について、
国税局は「急速な円高の進行や欧州危機などの影響で法人税の税収が落ち込んだため」としている。

国税局によると、消費税が同351億円(1.8%)減の1兆8765億円で、
源泉所得税は同731億円(4%)増の1兆9187億円だった。

府県別の税収額は大阪が4兆3003億円でトップ。
次いで兵庫1兆2512億円、京都7174億円、
和歌山2524億円、滋賀2329億円、奈良1675億円の順。
大阪と兵庫を除く4府県が前年度を下回った。

近畿の2011年度の滞納残高は前年比7.7%減の1,568億円で、
13年連続の減少。
消費税の割合が年々増えており、2011年度は32.8%(514億円)だった。


本職の備忘。
この記事を読むと、
なぜ税務署が消費税と源泉所得税の徴収に力を入れているかがわかる。
特に、源泉所得税が増えている、というのが面白いな。


2012年8月14日火曜日

2012_0806_堺筋本町ブックハンティング。(4)


『スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス』、ポール・オースター

 

言わずと知れたポール・オースターの名作。
というか、個人的には「名作」という一言では片付けられないほど好き。
そういえば、初めて読んだ英語のペーパーバックもこの本だったと思う。

もちろんこの文庫もDVDも手元にあるんだけど、
200円で安かったので、自炊のために購入。
amazonでも未だに300円!
やっぱり、売れる本は値下がりしないものですね。

このブログでもすでに書いたけど、
このブルー・イン・ザ・フェイスは、やっと最近DVDが発売されたところ
(しかもすごい廉価!)。
初心を忘れるな、ということか。


結局、この日のブックハンティングは以上4冊。
出会ったのは、未来を切り拓くというより、
どちらかというとこれまでの自分を振り返る本でした。






2012年8月13日月曜日

2012_0806_堺筋本町ブックハンティング。(3)


『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』、中原昌也


そして文庫コーナーでは中原昌也。

以前に、『あらゆる場所に花束が…』を読んだけど、
いまひとつピンとこなかった。
けど、何か引っかかってきそうなところがありそうな気もするので、
再度チャレンジ。

中原昌也のノイズ方面の活動、
「暴力温泉芸者」は、コンセプトは好きなんだけどな。

2012年8月12日日曜日

2012_0806_堺筋本町ブックハンティング。(2)

そして、次に手が伸びたのがこれ。
やっぱり380円。

『岩波 新・哲学講義3 知のパラドックス』、岩波書店、1998年


泣く子も黙る岩波の「哲学講座」シリーズだけど、
この「新・哲学講義」シリーズは、割とくだけた感じで書かれている。

学生時代、このシリーズの中の、今日ちょうどピンポイントで1冊だけ売られていたこの3巻だけ読みたくて、図書館で借りた覚えがある。

その理由は、須藤訓任先生の論文、
「屋根から瓦が…… 必然・意志・偶然」が収録されていたから。
当時、須藤先生はまだ大谷大学の助教授(この肩書も懐かしい)で、
京大では総合人間学部の講義を週に1コマだけ非常勤講師として担当されていた。

論文は片っ端からコピーして貪り読んだものだった。
この論文もその頃読んだ論文で、
「必然・意志・偶然」を、
それぞれ「スピノザ・ニーチェ・九鬼周造」の思想と関連して論じたもの。
懐かしいなあ、この本。

最近になって、須藤先生があちこちで書かれた論文がまとめられたのがこの本。


ニーチェの歴史思想、須藤 訓任、2012年 



ただし、この論文集には「屋根から瓦が…」は収録されていない。
それにしても……この本、高い!
これはポンと買える本じゃないなあ。

そして衝動買いはまだまだ続く。




2012年8月7日火曜日

2012_0806_堺筋本町ブックハンティング。(1)

堺筋本町周辺は、紀伊國屋書店があるだけで、
文化的な欲求が満たされないスポットだと個人的には思ってます
(特に音楽・学術・サブカル・ITガジェット方面)。

そんな中で、比較的文化の風を感じるのが、船場センタービル内にある天牛堺書店。
この数日で代わる、○百円古本コーナーの物色が密かな楽しみです。

久しぶりに棚を覗いてみると、今日もいい出会いがありました。


『プラトン全集3 饗宴 パイドロス』、岩波書店


古代ギリシアの翻訳は、京大系の翻訳で読みたい。
というか、精度の観点から京大系の学者の翻訳でなければいけない――
ということを学生の頃に古代ギリシア哲学を専攻とする友人に諭された。
新潮文庫の森進一氏ももちろん京大系だけど、
なんといっても『饗宴』は重要テキストなので重複してもいい。

380円コーナーに無造作に置いてあったので、迷わず購入。
箱なしだったし、裏表紙はなにやらカビ的なもので汚れていたが即購入。
これがよくなかった。
これで購買欲に火が点いた…。

<明日以降に続く>






2012年8月6日月曜日

栃迫篤昌の大きな夢。

かなり昔に別のところに書いた記事だけど、
こっちにまとめることにする。


今日(2010年8月20日)のNHK「ヒューマンドキュメンタリー」は、
MFIC社長の栃迫篤昌(とちさこ あつまさ)だった。

米国には中南米出身者が約5000万人働き、祖国向けの仕送りは年間約6兆円にもなります。アメリカ在住の中南米移民の大半は、貧困により銀行口座を開設できない状況にありました。
そのため、母国への送金(仕送り)は専門業者に頼るしかなく、送金額の15%程度を手数料として泣く泣く支払っていました。
長年、銀行マンとして中南米各国に駐在した栃迫社長は、恩返しを果たそうとインタ-ネットを活用する独自のシステムを開発、送金手数料を大幅に引き下げる新しい金融会社(MFIC)を2003年に立ち上げました。

以上、ビイック㈱ 社長のブログ より。


「金融は社会の血液である」という経営理念のもと、
国際的なマイクロファイナンスを展開。
斬新なビジネスモデルとしても注目されているが、
わたしが心を打たれたのはその「人としての心意気」。
この人は後世に語り継がれる日本人になるでしょう。

その他参考記事。

社会の役に立ちたいと願う大学生の日記

お茶の時間

Microfinance International Corporation



2012年8月5日日曜日

ヤフー傘下に租税回避指摘


朝日新聞朝刊 2012年4月1日

ヤフー傘下に租税回避指摘
東京国税局 ヤフー側は提訴

インターネット検索大手・ヤフーの再編に絡み、完全子会社「IDCフロンティア」(IDCF、東京)が、会社設立時に約100億円を「のれん代」として損金の対象にした処理について、東京国税局が租税回避に当たると指摘したことがわかった。企業再編税制(*)に基づく処理だが、同局は制度の乱用と判断した。

同局は、約100億円のうち既に損金算入した約23億円について申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含め約6億円を追徴課税した。これに対しIDCFは東京地裁に提訴。ヤフーは取材に「訴訟中なのでコメントできない」としている。

ヤフーの再編に絡んでは、同局が2010年にも約540億円の申告漏れを指摘し、ヤフーは提訴。企業再編税制をめぐる課税の基準は明示されていない。

関係者によると、IDCFは09年2月、データセンター事業「ソフトバンクIDCソリューションズ」(IDCS、東京)から営業部門を分割し、設立された。IDCFには時価純資産として約14億6千万円が移転され、IDCSには対価として評価額115億円の株式が交付された。

IDCFは企業再編税制の下、差額約100億円について、会社のブランドカや将来性などを表す「のれん代」と算定。税制上5年で償却されるため、09年3月期の2~3月分と10年3月期1年分の計約23億円を損金算入し、その結果、2期とも赤字になった。

東京国税局はIDCF設立後の取引に着目。ヤフーは09年3月にIDCSを吸収合併したが、その直前にIDCSからIDCFの全株式を買い取っていた。のれん代を計上するには、IDCSとIDCFの完全親子関係が解消される見込みであることが条件。同局は、IDCSからヤフーへのIDCF株の売却は不合理で、この条件を満たすのが目的だったと判断した。
(浦野直樹)

(*)企業再編税制
企業の合併や分割を促し、国際競争力を高める目的で導入された。一定の要件の下なら資産を簿価で移転することを認め、所得が発生しないため事実上非課税になる。要件から外れる場合は通常の売買取引と同様。移転された時価純資産価額と取得対価との差額は、会社のブランドカやノウハウ、将来性の価値にあたる「のれん代」となり、損金算入できる。


ちょっと古い記事だけど、これも本職関係の備忘。
「のれん」とは「営業権」のこと。
この件の場合、

のれん代を計上するには、IDCSとIDCFの完全親子関係が解消される見込みであることが条件。同局は、IDCSからヤフーへのIDCF株の売却は不合理で、この条件を満たすのが目的だったと判断した。

というところが争点でしょう。

以上、本当に備忘のみ。




2012年8月4日土曜日

コンタクト会社「シンワメディカル」 6200万円脱税容疑


朝日新聞朝刊 2012_07_25 

コンタクト会社「シンワメディカル」 6200万円脱税容疑
大阪国税局が告発 

所得約2億1千万円を隠し、法人税約6200万円を脱税したとして、大阪国税局がコンタクトレンズ販売会社シンワメディカル(大阪市中央区)と実質経営者ら2人を法人税法違反容疑で大阪地検に告発したことがわかった。ほかに重加算税約2200万円が課せられるという。 

2人は佃章則・実質経営者(57)と西脇教善・経理責任者(52)。佃実質経営者は厚生労働省元課長補佐への贈賄罪で有罪が確定しており、事件を捜査した大阪府瞥が、所得隠しの疑いで国税局に通報していた。 

関係者によると、2人は2010年2月期までの3年間、架空の業務委託料を計上するなど経費を水増ししていたとされる。同国税局はグループ会社アイケアステーション(同区)も、09年9月期までの3年間に法人税約1300万円を免れたとして、同容疑で2人と法人を告発した。重加算税は約460万円。



本職の備忘録。

昨日に引き続き、脱税関係の新聞記事で気が滅入る
(だったら書かなきゃいいのだが)。

これは税務調査でなく、「厚生労働省元課長補佐への贈賄罪」の調査から
明らかになった余罪、ということみたいですね。

しかし、これも昨日の庚申会と同じく、これだけの記事から正確な判断はできない。
「架空の業務委託料を計上」というところが肝なわけですが、
まあ、ここまではっきり書いているということは間違いないのでしょう。
昨日の「庚申会」とは異なり、記者の署名なし。

何気ない脱税容疑の記事だけど、蓄積していくとちょっと勉強になりそう。
なので、以後も続けてみることにする。



2012年8月3日金曜日

宗教法人「庚申会」、源泉漏れ。


朝日新聞朝刊 2012_07_25

宗教法人、源泉漏れ  役員「給与」4200万円 

大阪国税局指摘  

京都府宇治市の宗教法人「庚申会」が大阪国税局の税務調査を受け、2011年までの5年間で辻本公俊(よしとし)・代表役員(59)が使った約4200万円について、源泉所得税の徴収漏れを指摘された。クラブでの飲食代や海外旅費などを法人の経費としたが、国税局は「私的な支出」で辻本氏への給与とみなした。追徴税額は不納付加算税などを含め約1500万円で、法人が全額納付した。 

宗教法人は、信者らからのお布施やさい銭、お守りの代金など宗教活動による収入が非課税で、宗教施設や土地にも固定資産税がかからない。だが、宗教法人が職員らに支払う給与については、一般の企業と同じく、宗教法人が一定額の所得税を支払い前に差し引き(源泉徴収)、それを税務署に納める義務がある。 

関係者によると、庚申会は、辻本氏が京都・祇園や東京・銀座のクラブで使った飲食代や、知人と海外旅行に行った際の旅費や宿泊費などについて、法人のお布施による収入から支出し、経費として処理していた。国税局は、このうち約4200万円分を「宗教活動と関係がない」と判断し、代表役員への給与と認定したとみられる。 

辻本氏は朝日新聞の取材に「いろいろな人と交友関係を結ぶことは私の考えを普及する手段と思っている。人のために有効に使っており、宗教活動だ」と主張。また、「旅行代は同行者の分を肩代わりした事実などはなく、国税局と見解に違いがあった」と話している。庚申会は「見解の相違があったが、指摘に従った」としている。 

庚申会は1974年に宗教法人化。宇治市内で神社・龍神総宮社を運営する。毎年3月の大相撲大阪湯所では、一部の相撲部屋が神社を宿舎として使っている。
(水沢健一)


本職に関する備忘。

代表役員の飲食代が、
「宗教法人の宗教活動の経費」として認定されるかどうか、という問題で、
一般法人の交際費の認定に通ずるものがあると思うけど、
この記事だけでは判断できないな。
「京都・祇園や東京・銀座のクラブで使った飲食代」というあたりに、
やや記者の悪意を感じなくもない。
よく、芸能人などの高所得者に関して、こういう報告があるけど、
実際のところ、判断がグレーなものも結構あると思うんだけどなあ。