2012年8月18日土曜日

金融円滑化法 中小企業、活用しても経営難

朝日新聞、2012年8月9日朝刊

金融危機で資金ぐりが苦しくなった中小企業の借金返済を先延ばしする金融円滑化法が、来年3月末で期限切れになる。
一時的には助かっても、経営を立て直すことができず、倒産する企業が増えている。

* 金融円滑化法
2009年12月に施行。元本の返済を待ってほしいといった要請が中小企業などからあったとき、それに応じる努力義務を金融機関に課している。
当初は11年3月までの時限立法だったが、2回延長された。

岡山市で、住宅の地盤工事を行う中小企業が2010年春、金融円滑化法を利用して、借金の返済猶予を金融機関に求めた。
08年のリーマン・ショック後、住宅着工件数が半減し、資金ぐりが悪くなったためだ。
地方銀行や信用金庫からの借金は計6千万円。金融機関は返済猶予に応じてくれた。
金融機関は、仮に融資が焦げ付いても、信用保証協会が損を肩代わりしてくれる制度を活用。自分たちの負担はほとんど発生しないので気前がよかった。月々200万円だった返済額は一気に10万円に滅った。「売り上げが確保できれば、まだやれる」。社長(64)は再起に向け、営業を強化。営業所を独立採算制に変え、社員のやる気も引きだそうとした。

ところが、夢はあっけなく打ち砕かれた。

岡山県内はライバル企業が多く、たたき合いで工事単価は2割下がった。
一方、材料費は2倍近くに上がり、赤字受注が続いた。
負債は1億6千万円に膨らみ、再建を断念。昨秋、破産を申し立てた。

国民負担も増加

金融庁によると、返務猶予してもらった中小企業は全国で30万~40万。
信用調査会社の帝国データバンクは8日、円滑化法を活用した中小企業の7月の倒産が前年同月の2.4倍の41件に急増し、過去最多になったと発表。
返済猶予が、一時的な延命策にすぎなかったことが表面化してきているのだ。
倒産が増えれば、国民負担も増える。金融機関の焦げ付きを、全国の信用保証協会が肩代わりする費用として、すでに計4兆8千億円(08~11年度)の国費が使われた。
政府内には、12年度も1兆円前後の税金投入が避けられないとの声がでている。    
(松田史朗)

「地域経済は深刻な疲弊のもとにある。
こうしたなかでの大増税は、国民の暮らしに計り知れない打撃を与える」。
長野県坂城町議会は6月、野田佳彦首相らに消費増税撤回を求める意見曹を全会一致で決めた。
意見書を出すよう陳情した宮坂富雄さん(65)は隣の千曲市で電器店を営む。
昨夏に地上デジタル放送になってから薄型テレビのブームが終わり、売上高は一時、半分以下に落ちた。
商店街では「増税後も商売が続けられるだろうか」と不安を言い合うことが多い。
長野県商工団体連合会によると、6月末までに県内77市町村のうち30近い議会が増税反対の意見書を可決した。
全国では、神縄県名護市議会、岩手県議会などで可決が続いている。

宮坂さんは「増税されれば、輸出をする大企業だけが残り、地域の中小零細企業はつぶれかねない」と心配する。大企業が集まる東京や大阪など大都市に比べて地方は所得が低く、消費増税で消費が大きく落ち込むおそれがあるからだ。

内閣府の県民経済計算では、一人あたりの年間所得は2009年度、東京都が391万円で最も多く、高知県が半分ほどの202万円で最も少なかった。
11年の県庁所在地ごとの物価指数は横浜市の107.1が最も高く、宮崎市の96.7が最も低いなど地方は物価が安いが、大都市圏との所得格差ははるかに大きい。
所得が低い人は食料品など生活必需品にお金を使う割合が高い。一方、消費税は生活必需品にも同じようにかかるので、所得が低い人ほど負担感が強い「逆進性」がある。つまり、消費増税すれば、地方に住む人ほど負担が増し、くらしが厳しくなるのだ。
地方では今、円高が進んで企業が工場をアジアなど海外に移したり、園内生産を縮小したりしている。

日産自動車は小型車マーチの生産を10年に日本からタイに移した。
ソニーは、栃木、福島県の計3事業所でしていたリチウムイオン電池の組み立てを、来年度末までに中国とシンガポールの工場に移す予定だ。
大企業の工場は他の職場より給料がいい。これらがなくなれば、地方の所得水準はさらに下がり、働く場も減る。こうした地方の疲弊に消費増税が追い打ちをかける。
「増税の必要性は理解するが、(物価が下がり続ける)デフレ下では瀕死の地方経済に致命的な打撃を与えるととになる」。
参院の特別委員会が1日に字都宮市で開いた地方公聴会で、大市木材店(字都宮市)の大塚泰史代表取締役はこう訴えた。

(大日向寛文、松精祐子)


本職備忘。
地方経済の不振を伝えるため、
金融円滑法と消費税の増税が同じ囲み記事で取り上げられてる。


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