2012年9月2日日曜日

「障害ある子の育児に疲れ」 /岡田斗司夫の人生相談が素晴らしい。

朝日新聞 8月25日 be「悩みのるつぼ」(人生相談)

岡田斗司夫の人生相談があまりに素晴らしかったので引いておく。

「障害ある子の育児に疲れ」 母親30代
私は30代の愚かで冷酷な母親です。一人っ子は知的障害児で、言葉はほとんど理解しておらず、自分でできることもほとんどないため、生活上の介助は私が行っています。

私は小さいときから見えっ張りで優秀な人間でいたかったため、勉強や運動、スタイルに至るまで努力してトップの位置にいました。人に負けたことはほとんどなく、だから「この私」からこのような子供が生まれ、育てなくてはならないなどと夢にも思ってませんでした。私にとって初めての「敗北」です。

生まれて以来、周囲にお願い事をすることが多く、頭を下げることが嫌いな私は「なぜ私が気を使わなければいけないのか」と腹立たしく、我が子に対し「この世からいなくなってしまえばいい」とさえ思います。

子供は睡眠障害の傾向もあり、体調もくずしやすいなど気を抜くことができません。私自身の体調も悪く、生理も1年ほどとまっています。

つらい状態を夫や親に訴え、精神的、物理的な協力を求めても、言い方が悪いのか「愚痴が始まった」程度にしか思わないようです。現状に弱り果て、すぐにでも失綜してしまいたいです。子供の世話や子供を取り巻く環境から距離を置き、明るく健康に生活するにはどうしたらよいでしょうか。私のようなどうしょうもない母親に頂ける助言はないものでしょうか。


「失踪して仲間と会いましょう」 評論家 岡田斗司夫

あなたは「愚かで冷酷」じゃない。「正直で冷静」なだけです。

私も育児経験があります。特に問題なく健康に育ってくれましたが、そんな育児ですら「もう逃げたい」と思ったことが何度もありました。だからあなたの感じだことは間違いじゃない。

そんなあなたは、実はすでに正解に行き着いています。

「自分が明るく健康に生活するには」「子供の世話や取り巻く環境から距離を置く」ことが必要で、だから「今すぐに失綜してしまいたい」。

ね? これがあなたの望みであり、同時に現状の打開策です。「失綜」でコンセプト的には大丈夫。工夫すべきは、方法と手順です。

まず期間。1週間が妥当でしょう。3日間では残された家族が抜本的な手を打たず、やり過ごせてしまいます。

次に方法。いきなりはダメ。数日から1週間の事前告知期間を置きましょう。

「もう限界なので、これから毎月1週間、私は一人旅に出ます。第1回は今度の土曜から来週金曜夜まで。子供の世話をどうするか、あなたたちが自分で考えて下さい」と宣言します。

あなたがいなくなったらどうするか、「本気」でシミュレーションさせましょう。その時はじめて、あなたの周囲の人たちも、生理も止まってしまうほどのつらい状祝を「自分ごと」として認識してくれるでしょう。

注意点は「単なる脅しだろう」と見くびられないこと。だからこそ、第1回の失綜は必ず実行してください。でないと「単なる待遇改善の脅し」と受け取られて終りです。家族たちも、なにも学べず成長もできません。

さて「失綜」してる間はどうしましょう?

映画を見たり、ショッピングをしたり、久しぶりに友達に会ってみる。

楽しそうですね。でも一番のお勧めは、「同じ障害児を持つ母親たちに会ってみる」です。

彼女たちも例外なく、あなたと同じ苦しみやストレスを抱えています。あなたの「プチ失踪」の冒険談を話してあげてください。悩みをシェアし、同じ方法をとれない「仲間」のために代案を考えてあげましょう。

あなたの「失綜」計画は、あなた1人のワガママのためじゃない。家族や同じ境遇の「仲間」たちを教え導くための旅なんです。2~3日ぐらいなら、私の家に泊めてあげますよ。成功を祈ります。



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岡田斗司夫、素晴らしいです。
『オネアミスの翼』で心を震わせたのは間違いじゃなかった。